銀雨関連、PH、KBもしくは背後の予定(現状)、設定関連を書き記す。
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「りっちゃん、今日も可愛いな♪ 今から俺とデートしようぜ?」
いつものように声を掛けられる。
人前でいっつも恥ずかしいことをいうものだからジト目で睨んでやってもこいつは気にしない。
「なになに、もしかして照れてんの?」
「ばっ」
手を握ったまま子供みたいににやにや笑ってくるこいつの顔面に思わず起爆符を叩きつけてやりたくなって我慢しながら毒づいてしまう。
「……なにアホいってんのよ! 病院行く? 頭のお祓い?? 頭さよならすりゅ???すりゅすりゅ?」
うん、正直自分で言っててこれはないと思った。
「どうせ噛むなら言葉じゃなくて俺の事を可愛く噛んでくれよ。それとも……俺が噛んでやろうか?」
かと思ったらもっとあほなことを言ってきた。
どうしてくれようかこいつ。
なに人の手に口づけようとしてんのよ、こんな往来で。
見つめてくるんじゃないわよ。
「4cmの厚さのステーキまでならナイフを入れないでも噛み千切れるわ。 ――米国産でも」
噛み千切ってやろうかという意志を込めて精いっぱいジト目で睨んでやる。
私の八重歯は鋭いんだよ?
「――陸が噛んでくれるなら、噛み切られても構わないぜ?」
だめだこいつ通じない。
「……煮ても焼いても食えない奴なんか、食べてあげない」
子供っぽいとわかっていながらもぷいっとそっぽを向いてゆるりと手を振りほどいた。
これ以上この話題に付き合ったらこいつのペースだ。
「えー、俺多分うまいよ? 1回食ってみれば分かるって。なぁなぁー」
だというのにめげずに肩に手を回そうとしてくる、本当にこいつは……。
「――ふんっ!」
ごすっとみぞおちに肘を入れる――やっぱり最後は物理だ。
「……つ、強気なりっちゃんもチャーミング、だ、な」
倒れる時でもサムズアップしてるこいつの根性だけは認めなくもない。
「……はぁ」
もう、溜息しか出ない。
こめかみをじっくりともみほぐす。
頭痛がしそうだ
まったく……。
「真面目にしてれば格好良いのに……なんでこいつはもう……」
符を飛ばして式にお姫様抱っこで運ばせる。
「り、りっちゃんが王子様になりたいなら、俺は、お姫様になることも厭わない……」
……青ざめた顔で何を言っているのだこいつは。
もうこれなら放っておいても大丈夫だろう。
式にこいつを捨てて良いよ、と命令を出した。
「げっ」と言いながら落ちていくあいつ……いい気味だ。
そしたらあいつくねくねして抗議してきた。
「酷いわ酷いわりっちゃん王子の王子なしっ!」
ほんと何を言ってるのだろう、こいつ。
いつも通りだけど。
ほんと、何をいまさら――
「何をいまさら。 もとより、たとえ世界が変わっても私が王子になんてなるわけがないじゃない」
私だって女の子なんだよ?
私に王子を求めるなんて何を考えているのか。
もう少し言葉を考えてよ。
そりゃあ可愛げはないけどさ――
「――でも俺の中ではお姫様だぜ」
……ずるい。
尻もちついているのに、ずるい。
こいつからのウィンクに、私の尻尾の毛が逆立つのがわかる。
何にも言えなくなって「ふん」って顔を逸らすことしかできない。
「……言ってなさい」
自分でも顔が赤面しているのを自覚しながらかろうじて悪態を吐いた。
「へいへい、勝手に言わせて頂きますよ。……可愛いなぁまったく」
だから何言ってるのよ!
……こんな往来で。